【レビュー】うずらの卵用に自動孵化器を買ってみた(エサ編)


ウズラのエサについてもまとめておきました。ウズラをペットとして飼育するのが流行りだしたのは最近のことなので王道のマニュアルみたいなのはありません。ネットではいろいろな情報が錯そうしていますが、とりあえず個人的なまとめはこんな感じです。



ウズラの食性
鳥の食性は大きく、①植物食性②動物食性③雑食性ーに分けることができます。

植物食性は、草木の実や種子類、果物、花蜜などを食べる食性でインコやオウムなどが代表的な植物食性の鳥です。

動物食性は、虫類、肉類、魚介類を食べる食性で、ツバメ(虫食)、タカ、フクロウ(肉食)などが挙げられます。

雑食性は、植物と虫類のどちらも食べる食性です。キジ科のウズラやニワトリは、草の葉や種、昆虫などを食べる雑食性に分類されます。市販のうずらエサにはトウモロコシなど種子類とアルファルファという牧草、動物性タンパク質の魚粉などが配合されています。

このように、同じ鳥でも食べるエサは様々です。飼育する鳥に合わせた適切なエサを与えてやりましょう。


ウズラに必要な栄養素
ウズラを飼育する上で必要な栄養については、愛知県の飼育マニュアル国連食糧農業機関(FAO)のまとめたレビューに養分要求量が詳しく掲載されています。飼料会社や養鶉(ようじゅん)農家はこうした数字を基準にウズラに与えるエサを決めているので、ペットとして飼育する際も参考にするとよいでしょう。

マニュアルに記されている養分要求量の数値は、あくまで採卵用として飼われている産卵期のメス並ウズラを対象としたもので、オスや産卵のピークを過ぎたメスに同じエサは与えすぎになるので気をつけてください。

なお、養鶉場ではウズラを早く成長させるために18〜24時間照明で飼育しているので、その分ウズラが食べるエサの量は多くなりますが、自然光で育てるペットでは、不断給餌(食べたいだけ食べさせる)でも養分要求量の値ほどの量は食べません。


基本は専用エサを
ウズラは、ニワトリなどの家禽と比べてタンパク質を多く要求するのが特徴です。生まれてから2週間は27%、成鳥になるまでが25%、産卵期で20〜22%と、15%前後の家禽(ニワトリ)や8%程度のインコと比べるとかなり多めのタンパク質を必要とします。このため(特にはじめての飼育の場合は)エサはウズラ用に調合された専用フードを使うようにしてください(【レビュー】バーディーうずらフードを買ってみた)。


ヒメウズラについては、このようなデータはありませんが、海外ではタンパク質が20%以上(ヒナは30%)含まれるキジ(Game bird)用やターキー(Turkey)用のエサを使っている人が多いようです。日本では入手が難しいですし、成分的にも似ている並ウズラ用のエサをそのまま使っておけば問題ありません。一部サイトでは、ヒメウズラにはタンパク質を減らしたエサを与えるよう書かれていますがこれは間違いです。タンパク質の与え過ぎがよくないというネットの情報が、ヒメウズラには低タンパクエサをとなったようです。

米国でポピュラーなキジエサ

専用エサ以外のものを与えることについては後で詳しく説明しますが、例えば、シード類などは脂質、カロリーが高く嗜好性が強いですし、豆腐やオカラはほとんど栄養がなく、食滞を起こしやすいです。エサの種類によっては栄養過多や不足を引き起こす可能性もあるので、専用エサ以外のものを与えるときは、事前に栄養成分をしっかり調べた上で与えるようにしてください。栄養価の異なるエサを与えても短期的には影響はないですが、続けると肝障害などの病気を引き起こす原因になります。

ウズラ、オウム、ニワトリの養分要求量


ヒナから成鳥までのエサ
エサは、成長期のウズラの骨の形成と硬化、臓器など体の発育に大きな影響を与えます。特に生後2週間までは高いタンパク質比率(27%以上)のエサが必要になりますし、病気にかかりやすいので、栄養バランスがとれた専用エサを与えるほうが安心です。この時期に十分な栄養が取れないと成鳥になってからの発達にも大きく影響を与えます。

生後3週間から1ヶ月のあたりで、徐々に成鳥用のフードに切り替えていきます。特にメスは40〜50日目あたりから産卵を始める(並ウズラの場合)ので、それに備えてカルシウムやビタミン、タンパク質の多く含まれたエサが必要です。こうした栄養が不足すると、軟卵や卵詰まり、クル病の原因になります。

なお、ミルワームや緑餌(野菜、雑草)、シード類はこの頃から与えて大丈夫ですが、与える際はグリット(粗めの砂)も一緒に置くようにしてください。歯のないウズラは、胃袋(筋胃、砂のう)の中でエサと砂とを混ぜ合わせることでエサを細かく砕き消化します。グリットがないと固形エサは十分に消化できません。グリットは砂浴びの砂のような細かいものでは用を成さないので、ある程度目の粗いものも置きます。


エサ選びのポイント
成鳥には、ウズラ専用のフードを与えてください。エクセルうずらバーディーうずらフードあたりがペットショップやホームセンターでも取り扱いがあるので入手しやすいです。ウズラ用に栄養バランスを考えて配合したエサ(完全配合飼料)なので、専用フードだけ与えておけば、基本的には他に余計なものを与える必要はありません。エクセルは魚粉多めでニオイが強め(焼きそばに入れる削り節に近い)なので、ニオイが気になる方はニオイ控えめ(煮干しっぽい)のバーディーがおすすめです(※バーディーウズラについてはこちらで詳しくレビューしています)。

バランスのとれたエクセルうずら

市販のウズラフードは肥らせる家畜用に配合されたエサでペットウズラには良くないという意見がありますが、そもそも、ウズラやニワトリ用のエサは他の鳥類のエサと比べても低カロリーです。エサの与えすぎは余分な脂肪を付けるだけで、養鶉農家にとって採卵用のウズラに高カロリーなエサを与えて必要以上にウズラを太らせるメリットはありません。

養鶉場の飼育環境

なお、養鶉場ではエサ代を節約するために狭いケージ飼育でウズラのカロリー消費を抑えています。一方で、成長を促進させるために24時間照明をあててウズラを育てています。ペットウズラの飼育環境であれば、日照時間が少ないためエサの摂取量は家禽ウズラより少なくなる一方で、ケージ内を歩き回ることで消費カロリーも増えます。もともとウズラは必要な量しかエサを食べませんので、摂取カロリーや栄養を考えて配合された専用フードであれば食べ過ぎの問題は起こりにくいのです。


与えるエサの量
エサの量については、並ウズラのメスは不断給餌で1日あたり20g前後を食べます(粉エサのみの場合)。一方、オスはその半分の10g程度で、ヒメウズラは並ウズラの半分程度です。ウズラは必要な量しかエサを食べませんから、ある程度の量のエサを置いておけばオスメスや並ウズラとヒメウズラを一緒に飼育しても食べ過ぎの問題は起こりません。

なお、上記の食餌量はあくまで運動できる屋外で飼育しているウズラで調べた実績値です。狭いケージや水槽で飼育している場合はエサの量を1〜2割減らさないと肥満になる可能性が高いです。そのような環境で飼育する際はこまめに体重を測定し、肥満にならないよう注意してください。


カロリーの与えすぎに注意
なかには、ウズラに鳩用のエサをすすめる人もいますが、鳩用のエサに含まれるエネルギー量は1,000gあたり3,200kcalで、ウズラ用の2,800kcalに比べると高カロリーです。空を飛ぶハトと地面を歩き回るウズラでは1日の消費カロリーがまったく違うので、ウズラエサと同じペースで鳩のエサを与えるとカロリーオーバーで肥満や脂肪肝のような病気を引き起こす原因になります。

さらに、ハトエサのタンパク質は8.5%しかなく、卵を多く産むメスウズラの必要量(20〜25%)と比べるとかなり不足していることがわかります。タンパク質が不足するとウズラの成長・発達に大きく影響しますし、羽を食べる食羽行動や羽毛の色つやが悪くなるなど見た目にもはっきりとわかる症状が出てきます。

ハト用エサは高カロリー低タンパク

また、カロリーの過剰摂取を防ぐためといって、シードや種子類を混ぜて与えることを勧める方もいますが、シード類は嗜好性が高い上、脂肪分の含有量が多くほとんどがキロあたり3,000kcalを超え、なかにはサフラワーやエゴマのように5,000kcalを超えるものもあり逆効果になるので注意してください。同様に米糠(米ぬか)も4,100kcalで高カロリーです。※穀物の成分表(コトリヤHPにリンク)

シードを与える場合はカロリーに注意し少量を与えるようにしてください。シードには皮付きと皮を剥いたムキエサがありますが、うずらは皮付きでもそのまま食べて胃で消化できます。種子の皮にはミネラルなど栄養分が含まれているので皮付きのほうが栄養価は高いです。ウズラには皮付き、皮むき、どちらを与えても大丈夫ですが、劣化しにくく日持ちし栄養価の高い皮付きをオススメします。


ウズラ用エサにも注意
ホームセンターなどで安価に手に入る家禽(ニワトリ)用のエサは、キロあたり2,700kcalとカロリー面では問題ありませんが、タンパク質が15%で、ウズラの成鳥に必要とされる20〜22%(ヒナでは25%)と比べると不足しています。ニワトリエサを与える場合は、ミルワームなどでタンパク質を補給してやる必要があります。

また、家禽エサは粒が粗いので、ウズラが選り好みをし、食べ残しが生じると栄養が偏る点は注意が必要です。エサが粗いと消化吸収率が低くなる点も気をつけてください。一方で、オスを飼育する場合は、ウズラ専用の粉エサではカルシウムなどオスにとっては余分な栄養を摂取させてしまうので、エサの寄り分けができる家禽エサのほうが好ましい場合もあります。

なお、市販のエサでウズラに対応していると記載されているものでも実際はタンパク質が不足しているものがあるので、成分表でしっかり中身を確認してください。ペットショップでよく販売されているクオリスのヒヨコのエサ、ニワトリのエサなどはウズラ向けと記載がありますが、粗タンパク量が15%程度でウズラの飼育には不向きです。

ウズラ用なのにタンパク質不足


ラウディブッシュ
一部でウズラエサとして人気のあるラウディブッシュも要注意です。まず、植物食性のインコのエサを、雑食性のウズラに与える時点で栄養価的に問題があります。また、ラウディブッシュにはいろんな種類がありますが、ウズラ用として多くの人が使っているメンテナンスタイプは3,400kcalとかなりハイカロリーです。そのままウズラのエサに使うと25%、糖質ベースでは60%(※詳細は後述)もカロリーオーバーになります。

ラウディブッシュもウズラには高カロリー

1日で最大400-500kmの距離を飛ぶインコ用のエサを、地面を歩き回るだけのウズラに与えると完全にカロリーオーバーになります。これらは、例えると毎日5,000kcal以上を消費する水泳選手のようなアスリート向けの食事を、普通の生活をしている一般人が食べるのと同じです。代謝の少ない一般人が摂取するとカロリーオーバーになり、その食生活を毎日続けるとエネルギーは脂肪として蓄積され肥満や脂肪肝など病気の原因になり体には良くないのです。

同じラウディブッシュでもブリーダータイプであれば、タンパク質20%、エネルギー2,560kcalで成長ウズラ用フードに近い栄養価です。しかし、卵を多く産むウズラにとってはカルシウムやビタミン、ミネラルがかなりの量不足します。このようなエサを与え続けると軟卵が出てきたり、低カルシウム血症による子宮収縮不全が原因の卵詰まりを引き起こす可能性が高まります。エサにボレー粉を加えてという意見もありますが、ボレー粉だけ加えても、リンやビタミンD3の不足は補えません。ラウディブッシュはあくまでインコ用に配合されたエサということに留意してください。

付け加えるなら、ラウディブッシュは本国アメリカでは44オンス(ブリーダータイプ、1.25kg)のものは550円(0.44円/g)程度で販売されています。ところが、これが日本に輸入されると、同じブリーダータイプのミニ(750g)でも2,000円(2.66円/g)と、グラム単価で計算すると6倍の価格で販売されているのでコスト的にも問題ありです。ちなみに、米国でウズラのエサにラウディブッシュを使っているという話は聞いたことがありません。

なお、ラウディブッシュには、酸化防止剤(アスコルビン酸)や合成保存料(ソルビン酸、プロピオン酸など)のような添加物も結構使われていますし、水酸化アンモニウムや酸化亜鉛など日本国内では添加物として指定されていない原材料も使用されている点は留意すべきです。特に卵を食用に使う方は注意してください。後述しますが、エサの鮮度の問題も含めて、わざわざ高いお金を払ってまで使う価値があるのかなと思います。

獣医師推奨ということでラウディ・ブッシュを勧めるサイトをよく見かけますが、飼料メーカーや商社にも獣医師資格を持った人はたくさん働いていますし、町の獣医さんよりは飼料メーカーや農業試験場で働いている獣医師や研究者のほうがウズラに関する知識は豊富です。歯科医推奨の歯ブラシとか、病院で採用されている空気清浄機とかと同じで、獣医師推奨という言葉をあまり鵜呑みにするのはどうかと思います。
※ラウディブッシュについてはこちらにまとめているので参考にしてください


ペレットについて
ラウディブッシュも含めたペレットエサについてもう少し解説します。飼鳥の分野ではペレットという呼称が一般的ですが、ペレットとはトウモロコシなどの原材料にビタミンやミネラル、アミノ酸を添加した配合飼料を圧縮成形したもので、乾燥ドッグフードや小動物用のミックスフードと基本的には同じです。グレードによって、安価な材料を使ったものからオーガニックまでいろいろな種類があります。

インコのような飼鳥(しちょう)用のエサとして人気のペレットは、成長に必要な栄養がほぼすべて含まれている完全栄養食です。基本的にペレットと水だけ与えておけばほかに余計なものを与える必要はありません。

かつてインコのような飼鳥には、種子類を中心に配合されたシードエサを与えていました。ところが、飼鳥の栄養学が発展するに伴いシードエサだけではビタミン類などの栄養素が不足していることがわかってきました。このため、従来のシードエサに加えて、ビタミン類とボレー粉やカトルボーンのようなカルシウムを追加で与えるようになりました。

さらに、シードエサは脂肪分が多く飼鳥に与えると肥満になるなどの問題がわかってきたことから、その解決策としてアメリカなどを中心にビタミンやミネラルなどを添加しカロリーを調整したペレット食が開発、発売されるようになりました。飼鳥の分野でペレットが人気なのは、インコやオウムの健康にとってペレットが有益だからです。獣医さんが飼鳥にペレットを薦めるのはこうした理由があるからです。


飼料とペレットの違い
ところが、ウズラやニワトリのような家禽はちょっと事情が違います。元来、家畜として飼育されてきたウズラは、大学の農学部をはじめ、国や地方自治体の農業研究所、飼料メーカーなどで長年にわたり飼育について研究されてきました。こうして蓄積された研究データは学術論文や飼要標準としてまとめられているのです。栄養学の面ではインコなどの飼鳥よりはるかに研究が進んでいます。

飼料メーカーはこうしたデータや自社で蓄積したノウハウをもとにウズラ用の飼料を配合して養鵜農家に販売しています。ウズラ用の配合飼料にはトウモロコシなどの原料に加えて、ウズラの成長に必要なビタミンやミネラル、アミノ酸などの各種栄養素も添加されています。当然、カロリーもウズラにとって過不足がないように調整されています。ペットショップで販売されているウズラエサも、基本的には飼料メーカーが配合するものと同じです。

要するに、ウズラエサもインコ用のペレットも、トウモロコシなどの穀類に各種ビタミンやミネラル類を添加したもので、基本的な作り方は同じなのです。ここまで理解すれば、ウズラにインコ用のペレットをわざわざ与えることがいかにおかしなことかがわかると思います。ウズラ飼育が盛んな日本ではウズラ専用の完全栄養食が安価に手に入るのに、わざわざ高価なインコ用のエサを使う意味はないのです。


ペレットの安全性
エサの安全性についても触れておきましょう。ペレットを含めたペットフードについては、2007年にアメリカでおきたメラニン混入事件をきっかけにペットフード安全法という法律が日本国内では整備されましたが、罰則規定がないなど実効性に疑問がもたれています。同法では5%未満の原材料の表示義務がないため、どのような添加物が使われているかはメーカーが公表しない限りわかりません。さらに、海外製のエサでは、日本で使用が制限されている添加物や薬品が使用されているケースもあります。

一方、ウズラエサについては、家畜用飼料の扱いとなるため「飼料安全法」という法律が適用され、添加物等についての使用基準などが厳格に定められています。さらに、肉や卵を人間が口にしても影響がないように「食品衛生法」でも添加物の残留基準値が定められているので、規制が緩いペットフードと比べると、家禽用飼料であるウズラエサは格段に安全性が高いといえます。


低タンパクなエサは脂肪肝の原因
ここで、エサ中のPFCバランス(炭水化物、脂質、タンパク質の比率)について少し説明しておきます。ニッパイのバーディーウズラを例に上げると、ざっくりとした計算ですが、1,000gあたりのカロリー2,680kcalのうち、タンパク質(1gあたり4kcal)が24%で960kcal、脂質(同9kcal)が2.5%で225kcal、残りが炭水化物(同4kcal、)で1,495kcalとなります。

ところが、同じ総カロリーでニワトリエサのようにタンパク質比率が15%になると、タンパク質は600kcalに減る一方で、炭水化物が1,855kcal(+360kcal)に増加します。ウズラエサの代わりにCP値の低いニワトリエサを与えることで、タンパク質が不足するだけでなく、炭水化物を24%も余計に取りすぎることに繋がるります。人間の食事に例えると、タンパク質が多いから魚や肉の量を減らして、かわりにご飯を2杯に増やすといった感じでしょうか。

ウズラの体内に入った炭水化物(糖質)はブドウ糖に分解されてエネルギーとして使われます。ところが、エネルギーとして使いきれなかったブドウ糖は最終的に体内に脂肪として蓄積されて、肥満や脂肪肝を引き起こすのです。

ウズラを屋外など広いスペースで飼育していれば、余分に摂取されたカロリーは運動で消費されるので問題はありませんが、狭いケージのような運動できない環境で飼育していると、消費カロリーが少なくなる分、脂肪が蓄積されやすく影響は大きくなります。

上記は、ハトエサやラウディブッシュ(メンテナンス)にも当てはまります。せっかくなので愛用者の多いラウディブッシュのメンテナンスについても計算しておきましょう。総カロリー3,400kcal/kgで、タンパク質11%、脂肪6%で、3,400-440-540=2,420kcalですから、メンテナンスタイプを与えるとウズラエサ(1,495kcal)に比べて炭水化物(糖質)を60%も多く摂取させることにつながります。


野菜と雑草
エサの与えすぎが気になるようであれば、ウズラ専用フードを少し減らして、代わりに小松菜のような葉物や雑草を与えて総摂取カロリーを減らすというコントロール方法もあります。野生のウズラが種子や雑草、虫などを食べて生活していることを考えれば、緑餌(りょくじ、雑草、葉物野菜のこと)を与えるのは合理的と思えます。

しかし、緑餌を加えることで専用フードの摂取量が減り、想定された栄養バランスは崩れる(例えば、タンパク質やアミノ酸の摂取量が減る)ので、使う場合は栄養価を再計算する必要がでてきます。なお、専用フードにはアルファルファというマメ科の植物を粉にしたものが含まれているので、緑餌を与えなくても特に問題はありません。

我が家の場合は、緑餌はウズラのストレス解消を目的に少量(エサ全体の1割程度)を与えています。庭に生えているシロツメクサ(クローバー)やチア(チアシードの葉)を与えてやるとよろこんで食べます。ただし、シロツメクサなどマメ科の植物は一般的な雑草に比べるとカロリーが高めなので与えすぎはよくありません。また、特にメスでは、野菜や雑草を与えすぎることで、タンパク質が不足する弊害も出てくるので気をつけてください。

クローバー+チアの葉を刻んで

生の緑餌が手に入りにくい冬場は、スーパーで売っている小松菜などの葉物野菜を与えるとよろこびます。チモシーなどウサギ用の牧草(乾草)もオススメです。乾燥した小松菜やチモシーはカロリーも少ないのでミキサーで細かく砕いてウズラのエサに混ぜると摂取カロリーを減らす効果もあります。

なお、タマネギやネギ、ニラは有機チオ硫酸化合物という成分が俗にいうタマネギ中毒を引き起こすので与えてはいけません。また、ほうれん草に含まれるシュウ酸はカルシウムの吸収を阻害するので良くないという意見もあります。熟していないトマト(ヘタ、葉、茎を含む)やジャガイモ(芽、茎、葉)、ナス、ピーマン、アスパラガス、豆苗などのスプラウト類(発芽野菜)は毒性のあるアルカロイドと呼ばれる成分を含んでいるのでできるだけ与えないようしてください。少量であれば問題ないとは思いますが、わざわざリスクのあるものを与える意味はありません。


飲水量とエサの関係
エサ中に含まれる余分なミネラルやタンパク質は飲水量を増加させます。ナトリウムやカリウム、塩化物といったミネラルは飲水量や湿った糞の増加に結びつきます。人間が辛いものを食べると水分を多く取りがちになるのと同じです。

ウズラは通常エサの2倍の水を飲みますが、夏場など温度が上昇すると飲む水の量も比例して増えます。環境温度10度では総水分損失は12%程度ですが、30度になると50%まで増加します。夏場は通常より水やり場の水の量を増やしてください。高温時は水の温度を下げるよう、水置き場は日陰に設置しましょう。

なお、飲水量が増えると、尿と一緒に体内のミネラルも余分に排出されます。暑い時期は食餌量も減るので、30度を超えるような環境で飲水量が増えているようであればビタミン剤を添加したほうがよい場合もあります。



カルシウム補給
卵を産むメスのためにエサにボレー粉(牡蠣殻)を混ぜることを勧める人がいますがこれはやめたほうがいいです。ボレー粉は本来シード食中心の飼鳥用のカルシウム補給源として使うもので、カルシウムが添加されているウズラエサには追加する必要はありません。

ボレー粉を追加するとカルシウムの取り過ぎを招き、尿石病などの病気を引き起こす可能性があります。ボレー粉を与える場合はエサに混ぜず、単独で置いておけば、メスが要求するときだけ勝手に食べてくれます。

ちなみに、カルシウムの吸収を高めるためにはビタミンD3が必要になります。ビタミンD3は紫外線を浴びることで体内で生成されます。ビタミンD3 をつくるのは紫外線の中でもUV-B波と呼ばれる波長のものです。UV-B波は窓ガラスを透過しないので、ウズラに日光浴をさせるときは屋外に出してやります。なお、ウズラエサにはビタミンD3が添加されているので、日光浴をさせなくても問題はありません。


運動と照明管理
カロリー消費のために、広めの環境で飼育して運動をさせることもウズラの健康には有益です。エサ場、水場、砂場などのレイアウトを工夫してウズラたちが飼育スペースを歩き回るようにします。ミルワームを与えるときエサの奪い合いで走らせるようにするのも効果的です。

そのほか、人間と同じ生活環境で飼育していると、夜遅くまで照明がついていることでウズラの食餌量が増えるので、照明のある環境で飼育する際は、夜間、遮光カバーをかけるなどの対策をするとムダなカロリー摂取を抑えることができます。


制限給餌
メスの産卵は寿命に影響するので、産卵数をコントロールしたいと考える人もいるようです。産卵抑制に有効なのが前述の照明管理と制限給餌です。産卵期の並ウズラメスの代謝エネルギー要求量は1日あたり62kcalで、これを市販のウズラ用粉エサで与えるとおよそ22gになります。このエサの量を15gに減らすと体重は減少するものの産卵を抑制できるという調査結果が出ています。

タンパク質とエネルギー摂取量との関係では、タンパク質の比率よりもエネルギー摂取量のほうが産卵率に影響するという結果が出ており、タンパク質を減らすよりも総カロリーや炭水化物の比率を減らしたほうが産卵抑制には有効なようです。

制限給餌には、1回あたりの給餌量や給餌回数を減らす量的制限と、籾殻など栄養価の低いエサを混ぜることで総カロリーを減らす質的制限とがあります。制限給餌をおこなう際は、ウズラの体重を確認しながら調整してください。

ただし、制限給餌はウズラにストレスを与え、集団飼育下では他の個体を攻撃する「つつき行動」が増加するなど負の作用もありますし、エサを均一に与えることが難しい点は注意が必要です。食餌量を制限するよりも、低カロリーのフスマや粉砕もみ殻をエサに混ぜるほうが安全性は高いと考えられます。

なお、過度な制限給餌をすることで栄養不足になれば軟卵や産卵障害のリスクも上がります。並ウズラはたくさん産卵するように改良された鳥ですから、度を超えたエサの制限は控えてください。

体重減少については、生命維持の危険水準は30%と言われています。制限給餌をする際は、こまめに体重をチェックしてください。ウズラの場合、3日間給餌を中止すると体重が30%減少するということですから、制限給餌は最長でも2日程度と考えてください。


タンパク質
ウズラのエサについてもう少し解説します。ウズラのエサにとってタンパク質は非常に重要です。タンパク質はウズラの臓器や筋肉、血液、羽毛の形成に大きな役割を果たします。特にヒナの時期にタンパク質が不足すると臓器の形成に影響が及び発育不全を引き起こし生後生存率や寿命にも影響を与えます。タンパク質は必要量が不足することのないよう気をつけてください。

一部のウズラ飼育サイトでは、タンパク質の与えすぎが脂肪肝を引き起こすという書き込みがありますが、脂肪肝の原因は炭水化物や脂質の摂り過ぎです。タンパク質の過剰摂取が脂肪肝に影響することはありません。

タンパク質は脂質の代謝を促進するので、エサ中の割合が増加するほど体脂肪は減少していきます。タンパク質を多く摂取することで脂肪肝が改善するという研究結果も得られています。タンパク質が不足すると代謝が低下し、肝臓内の中性脂肪が血中に運ばれず、脂肪肝を引き起こす原因になるので気をつけてください。

養鶉場で並ウズラ(メス)1羽あたりに与えるエサの量は、1日当たり20g程度とされています。要求タンパク質が20〜25%ということは、毎日4〜5gのタンパク質が必要になります。

ところが、ハトや家禽、ラウディブッシュ(メンテナンスタイプ)のようなインコのエサではタンパク質の含有量は8.5〜15%程度で、1.7〜3gしか摂取できていないことになり恒常的にタンパク質不足の状態に陥ります。このようなエサを与え続けると栄養不足でウズラの成長、発達には大きな影響が出てきます。


ミルワーム
では、タンパク質の不足をミルワーム(ミールワーム)で補給することはできるのでしょうか。生エサのミルワームはタンパク質量が20%程度と高く、この数字自体はタンパク質の補給源としてはまずまずです。しかし、脂肪分(13%)が多いため、ミルワーム1,000gあたりのカロリーは2,200kcalにもなります。

ミルワームは与えすぎに注意

具体的に計算してみましょう。ミルワームの粗タンパク質量が20%程度ですから、1gのタンパク質を補うには5gのミルワームを与えないといけません。写真のミルワーム1パックが10g入りですから、5gとなると半パック。数えたことはありませんが、40〜50匹ぐらいでしょうか。

カロリーはどうでしょう。専用エサの成分から1日あたりの必要カロリーを逆算すると、並ウズラ(産卵期メス)1匹の適正なエネルギー量は54kcal(20g)となります。ところが、ミルワーム5gを追加すると11kcalプラスとなりますから、タンパク質補給目的でミルワームをやると20%のカロリーオーバーになります。ミルワームはあくまでウズラのストレス解消のためのおやつぐらいに考え、1日数匹を与える程度にしたほうがよいことがわかります。

余談ですが、ミルワームにはリンが多く含まれているのでカルシウムが排出され、ウズラには良くないという話を見かけます。上で示したとおり、1日数匹であれば、食餌全体に占めるミルワームの割合はごくわずかですし、リンの影響は無視しても大丈夫です。


豆腐その他
タンパク質については、豆腐やおからを推奨しているサイトもあります。ところが、実際はどちらも含まれるタンパク質の量は5〜6%程度と低く、補給源としてはかなり不足しています。さらに、豆腐には凝固成分として塩化マグネシウム(ニガリ)が0.4%程度添加されており、与え過ぎはマグネシウム過多でウズラの腎臓に負担をかけます。ウズラが1日に摂取できるエサの量は決まっているので、豆腐やおからを与えすぎると逆にタンパク質やその他の栄養不足に陥る危険性もあるので注意してください。

おからは意外とタンパク質が少ない

同じ大豆製品でも、きな粉はタンパク質が36%と優秀ですが、こちらは1kgあたり5,000kcal近いので、1gのタンパク質を摂取した時のエネルギーは11kcalとミルワームと同じぐらい高カロリーで、やはりウズラには向かないようです。

そのほか、高タンパクな食品としては、ピーナッツやゆで卵などが浮かびますが、ピーナッツのタンパク質は25%程度で6,300kcal、ゆで卵が13%程度で1,500kcalなので、やはりやめたほうがいいですね。 

きな粉はタンパク質 37%と優等生だが


タンパク質補給
こうしてみるとタンパク質は、市販のエサに使われている大豆カス(脱脂大豆、大豆ミール)(タンパク質45〜50%)、魚粉(フィッシュミール)(同60〜65%)のような含有率の高いものでなければ不足を補えないようです。

特に大豆カスは油分を抽出したあとの残りですから、低カロリーでタンパク質補充には理想的な食品ということがわかります。とはいえ、大豆カスは素人には手に入りにくいですし、入手できたとしても量が多いので、品質を維持しながら保管するのはなかなか難しいです。

20kgで2,400円

ということで、いろいろ探してみたところ使えそうなのがゼラチンです。ゼラチンは1,000gあたり3,500kcalとカロリー自体は高いですが、タンパク質の含有量が96%とタンパク質の塊みたいなもので補給源にはもってこいです。1.2gのゼラチンを添加するだけで1gのタンパク質を補え、カロリーも4kcalなので、ミルワームなどと比べると低カロリーです。

料理用ゼラチン粉のタンパク質は96%


エサの品質管理
ウズラ用の粉エサは劣化しやすいので、できるだけ製造年月日の新しいものを購入するようにしてください。エサの品質期限は通常1年程度ですが、開封すると酸素に触れることでエサの劣化がはじまるので1カ月以内に使い切るようにします。

特に湿度の高い夏場はエサの劣化が早く、ダニやカビが発生しやすいので、開封したものは冷蔵庫や冷凍庫で保管することをオススメします。カビの生えたエサを与えるとカビ性肺炎を引き起こし、死に至ることもあるので注意してください。

このほか、知っておきたいこととして、エサに含まれるタンパク質や脂質(大豆油など)は、空気に触れたり、紫外線があたることで劣化し、ウズラにとって有害な成分になることがあります。こうした劣化防止のためにエサによっては酸化防止剤などが添加されていることがあります。

油脂は、動物性より植物性のほうが酸化しやすく、特に大豆油は酸化の度合いが早いようです。エサを選ぶときは、製造日が新しいものや、日陰などで適正に保管されたもの、脱酸素剤入で密封されたものを選ぶことをオススメします。


輸入エサについて
海外メーカーのエサ(輸入品)については、通常は船便(おそらく常温)で輸送されています。例えば、アメリカから船便で輸送すれば到着までに1〜2ヶ月はかかりますから、国内メーカーの製品に比べると中身が劣化している可能性は高いです。

さらに、注意したいのが製造年月日です。日本国内で販売されている商品に記載されている製造年月日というのは、基本的にはエサを袋詰めした時点の日付です。例えば海外メーカーの製品をバルク(大口サイズ)で輸入して国内で小分けして袋詰めしているような商品では、日本で袋詰めした日にちを製造年月日として記載しても法律上は問題ありません。

ラウディブッシュは、日本ではPCNF社が米国で販売されているパッケージを輸入して、日本国内で小袋にリパック(詰め替え)して販売しています。しかし、ラウディブッシュ本社はこのような商品については、リパックで品質が低下するなどの理由から購入をしないように呼びかけています。

購入の際は製造年月日をチェックする


魚粉の酸化について
なお、エサに含まれる魚粉の中の油が酸化して臭うという話がありますがこれは間違いです。通常エサに使われている輸入魚粉については、輸送中の火災防止の観点から酸化防止剤(エトキシキンなど)が添加されているので酸化はおこりにくいです。

魚粉がにおう原因は、魚に含まれるタンパク質(トリメチルアミン-N-オキシド)が時間の経過とともにおこる還元作用(酸素を取り除く)でできるトリメチルアミンという物質に由来します。

家禽用のエサに魚粉を添加するのは、必須アミノ酸であるメチオニンなどが含まれているからです。ラウディブッシュのようなペレットでは、魚粉を使う代わりに石油製品(ナフサ)から化学合成で抽出したメチオニンを添加しているので粉エサ特有のニオイはしません。

◯心構え編
◯孵化編
◯ヒナ飼育編
◯エサ編
◯エサ編(ウソホント)
〇グッズ編
◯いろいろ編
◯1ヶ月経過編
◯2ヶ月経過編

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