【レビュー】うずらの卵用に自動孵化器(Automatic Incubator)を買ってみた(孵化編)


ウズラの卵を孵化させるための自動孵化器(孵卵器、インキュベーター)を購入したのでレビューします。ついでにウズラの卵の孵化から成鳥になるまでの育て方もまとめておきましょう。ウズラの孵化、飼育を検討している方は、はじめにこちらの「知っておきたいこと」にも目を通してください。
まずは卵を入手する
飼育用のうずらの卵はネット通販で簡単に入手できます。Amazonでは並ウズラの卵(有精卵)が購入できますが、ヒメウズラの卵は取り扱いがないようです。今回、私はウズラ大学で種卵を入手しましたが、いろいろ問題があった(詳しくはこちら「ウズラ大学でヒメウズラの種卵を買ったら酷い目に遭った件」を参照ください)のでオススメはしません。近所にヒメウズラを飼育している人がいれば、その人から分けてもらうのが一番でしょう。ヤフオクなどでヒメウズラの卵を扱っているブリーダーさんもいるので、評価の高い方から入手するのもよいと思います。

ちなみに、スーパーで販売しているうずらの卵(食用)は無精卵なので温めてもまず孵りません。とはいえ、たまに有精卵も紛れているようで、20個に1個ぐらいの確率でヒナが孵ることがあるようです。ただ、流通時の貯卵状態がよくない卵は孵化率や生存率が悪く、開脚障害のような障害を持った子が生まれる可能性も高くなるので、しかるべきルートで有精卵を入手することをオススメします。

並ウズラ(日本ウズラ)

スーパーで売ってるウズラの卵は並ウズラ(日本ウズラ)という種類ですが、今回孵化させるヒメウズラはそれよりふた回りぐらい小さく、いろんな色の個体が生まれるのが特徴です。ペットとして飼育するにはヒメウズラのほうがたのしそうです。

ヒメウズラ

卵を孵化器に入れる前に
卵が届いたら、すぐには孵化器に入れず、12〜24時間ほど冷暗所に定置しておきます。これは運搬中の振動で混ざった卵の中の空気が落ち着くようにさせるためです。

卵は、37〜38度の温度環境で転卵されることで孵化のスイッチが入ります。保管する際は、冷暗所で、卵の尖ったほうを下に、鈍端部(尖っていない丸いほう)を上に向けます。鈍端部には気室と呼ばれる空気が貯まるスペースがあるので、上に向けるのがよいのです。

左2列がヒメウズラ、右は並ウズラ

なお、今回は省略しましたが、卵を孵化器に入れる前に、43度の逆性石鹸に3分浸して卵の表面を消毒して、その後乾燥させる(濡れたままにしておくと卵の中に酸素が入らなくなる)と感染症などの病気予防になるようです。※洗卵は卵表面の「クチクラ層」と呼ばれる保護層が剥がれるのでよくないという意見もあります。

自動孵化器を調達
入手した自動孵化器(オートマティック インキュベーター)は中国メーカーの製品で、鶏卵(にわとりのたまご)が32個セットできます。全自動の転卵機能がついたもので、卵を置く場所には検卵用のLEDライトもセットされています。Aliexpressで見つけたもので、送料込で13,000円。DHL発送で注文から1週間もしないうちに届きました。なお、Amazonでも同じ商品が入手できます。

届いたインキュベーター

この手の自動孵化器は機器類の設置箇所の違いで大きく2タイプに分かれます。今回購入したのはヒーター類が底面に設置してあるタイプ(写真上)で、蓋をした状態でも卵の状態が確認できるところがメリットです。

ただ、底面設置タイプは、ヒナが生まれると卵の殻や糞が下部のファンやヒーターの上に落ちてくるので、下の写真のようなフタの裏に機器類を設置したタイプのほうが掃除など扱いはラクかもしれません。
ヒーター類をフタ裏に設置したタイプの孵化器

孵化器はこのほかにも、リトルママのような小型の孵化器もあります。購入以外にレンタルで貸出しているところもあります。ヤフオクだとヒメウズラの卵7個付きで2,000とかもあるみたいです。孵化器を選ぶ際は自動転卵機能のついたものをオススメします。



転卵機能とは
自動孵化器の最大の特徴は、面倒な転卵作業を機械が勝手にやってくれるとこです。転卵とは、ざっくりとした説明ですが、卵の中の胚の代謝を促進したり、ヒナが殻に癒着するのを防いだりするために定期的に卵を動かす作業のことです。

自然孵化では親鳥がコロコロと卵を動かし転卵しますが、人工孵化では数時間おきに人間もしくは機械が卵を回転させます。回数が多いほうが孵化率が上がるので、ウズラ農場では1時間に1回転卵をしています。

転卵の角度は90度程度が目安とされており、自動孵化器では卵を載せたバケットが2時間おきにモーターで左右に45度ずつ振れ、計90度動きます。


ヒナになる仕組み
ついでに卵がヒナになる仕組みについてもざっくり説明しておきます。ウズラになるのは有精卵の卵黄表面にある胚(胚盤)の部分です。卵黄(黄身)にはヒナが成長するために必要な栄養が詰まっています。一方、卵白(白身)には、ヒナが成長するのに必要な水分補給と、外部からの雑菌の侵入を防ぐ防御層の役割があります。ちなみに、卵の中にあるカラザと呼ばれる白い紐は、卵黄を卵の中央に固定する役割を果たします。
鶏卵の構造

胚は、卵黄から栄養を吸収しながら17日かけて卵から出られるよう成長していきます。卵黄は、ヒナが卵から出るときにはおなかの中に吸収されます。ところが、転卵がうまくできていないと卵黄が殻と白身の間にある卵膜に癒着してしまい、この癒着が原因でヒナが生きたまま殻から出てこられなかったり、消化器系の疾患にかかったりすることがあります。

※「たまご博物館」の鶏胚の成長ページでは卵の中でヒナが成長している過程が見れます。

孵化器を使わない場合
孵化は環境さえ整えれば専用の孵化器を使わなくてもできます。電気アンカやヒヨコ電球をダンボール箱の中に入れ、温度を制御するサーモスタットという機器を使って38度の温度をキープします。加湿用の水入れを置いて60%程度の湿度をキープし、あとは定期的に転卵を手作業でおこないます。

加温装置はヒヨコ電球が温度制御がしやすくオススメです。電気ヒーター系の装置はサーモスタットがスイッチをオフにしてもしばらくは加温が続きますし、オンになったときも暖まるまでタイムラグが生じ温度の管理が難しいです。

温度、湿度が安定しないと開脚障害や指曲がりなどの奇形が発生しやすくなります。正常に生まれてくる個体でも病気にかかりやすくなりますし、転卵機能のついた専用の孵化器の使用を推奨します。

転卵はこまめにするほど孵化率が上がります。特に孵化開始から最初の1週間の転卵は重要なのでこまめにしてください。転卵は入卵1週目は4時間に1回程度のペースで、残りは6時間に1回程度しておけば問題ないようです。並ウズラを手作業で孵化させたことがありますが、6時間に1回程度のアバウトな転卵で孵化率は30〜40%程度でした。

手作業で孵化させるときのポイントとしては、転卵をこまめかつ丁寧にすることです。急激に卵を動かしたり、転卵角度が大きすぎると中止卵になりやすいようです。癒着は卵の中のヒナの位置が少しでも動けば防げます。冬場は卵の温度が下がりやすいので素早く作業してください。

温度・湿度の管理
温度・湿度はヒナの孵化率などに大きく影響を与えるので、孵化中は適正に管理するように努めてください。孵化器内での温度・湿度の大きな変動は開脚障害や消化器系の病気を引き起こしたり、ウズラの寿命を縮めるなど重大な影響が出てきます。

胚(ヒナになる部分)はある程度の時間の温度低下には抵抗性がありますが、短時間でも温度上昇(ヒートストレス)が起こると発育異常、胎児姿勢異常を引き起こすことがあり、致命的になることもあります。39.4度以上になると孵化率とヒナ質に有害で、40度を超えると30分でヒナは死ぬと言われています。より正確な温度管理をするためには、赤外線温度計(2,500円程度で入手できます)で卵殻表面の温度を計測するのが有効です。

卵殻表面温度は適温

卵には卵殻全体にわたって空気を通す小さな穴(気孔)があり、そこを通して酸素と二酸化炭素を交換することができます。気孔からは水分も出入りするので、湿度が低いと胎児が脱水することがあります。このため、孵化にあたっては適正な湿度(60%程度)を維持することが求められます。ただし、孵化中の湿度が高すぎると卵内の水分が減らないことで気室のスペースが狭くなり、卵の中でヒナが肺呼吸を始めたときに十分な空気を確保できなくなるので注意してください。

自動孵化器の概要
自動孵化器の説明に戻ります。仕組みは簡単です。底面には湿度計とヒーター、ファン、転卵用のモーターが、側面には温度センサーがセットされています。温・湿度計に連動してヒーターとファンが動作し、ケージ内の温度と湿度を一定の状態に保ちます。転卵は2時間おきにモーターが作動し卵の位置が変わる仕組みになっています。

底面に湿度計とヒーター、ファン

側面に温度センサー

液晶画面(インジケーター)には、庫内の温度、湿度と転卵(2時間)のカウンター、経過日数が表示されます。ヒーター動作中は温度計マークが、ファン動作中はファンマークが表示されます。


温度の設定方法
温度設定はセットボタンを1回押して上下ボタンで選択します。初期設定は38.0度になっています。設定温度は37~38度がよいとされています。どの温度が最適かは書籍やウェブサイトによって様々ですが、愛知県の出しているうずら農家向けの飼育マニュアルでは37.8度を推奨しています。


孵化器の設定が反映される温度はあくまで温度センサーのある内部側面のものです。卵を置く場所の温度とは異なるので、正確な温度設定をするためにはキャリブレーション(調整)作業が必要になります。

卵の設置場所(バケット)にデジタル温度計を設置し、正確な温度を測定し、インキュベーターの設定温度と誤差が生じている場合は、各種設定からキャリブレーション調整してください。各種設定はセットボタンの3秒長押し&短押しで選択・変更できます。

湿度の調整方法
湿度調整については、本体下部の水路(カナル、プラスチックの壁で囲まれた細い溝の箇所)にファンの風が当たることで水が気化され湿度を上昇させます。庫内の湿度が45%を下回ると警告音が鳴るので、警告音が鳴ったらすぐに水を補充してください。

カナル(水路)に水を補充

1か所の水路に水を満たしておけば湿度は60%程度にキープされます。孵化前で庫内の湿度をさらに上昇させたい時や、冬場など乾燥した環境で湿度が十分上がらないときは、両サイドのタンクにも水を足せばさらに湿度を上げることができます。

なお、卵に霧吹きなどで直接水をかけないようにしてください。卵の殻の表面に水滴が付着すると、卵の中に十分な酸素が供給されなくなり、最悪の場合は中止卵になってしまいます。冬場は、冷たい場所に置くと、結露が起きて水滴が卵に付く可能性もあるので要注意です。

孵化器の使い方
それでは実際に孵化器に卵をセットしてみます。孵化器は温度変化の少ない風通しの良い場所に設置します。直射日光の当たる場所は特に春〜夏場に温度が40度以上になる可能性があるので避けましょう。また、エアコンを使う部屋に設置すると湿度が十分に上がらない可能性があります。洗面所あたりに設置するのがおすすめです。

使い方は簡単です。底部の給水タンク(水路・カナル)に水を補充し、電源を入れて、温度をセットした上で、卵を載せてリセットボタンを押せばスタートです。スイッチ入れてすぐは庫内の温度が安定しないので、卵を入れる24時間ぐらい前から孵化器を動作させておくとよいでしょう。

付属のボトルで注水します

卵を冷蔵庫で保管していた場合は、いきなり孵化器に入れず、常温で数時間おいてから入れてください。特に夏場など湿度の高い季節は冷蔵庫から出したときに結露で卵が濡れることがあるので注意してください。濡れた卵は殻が空気を通さなくなるので、ペーパータオルなどで湿気を拭いてからセットしてください。入卵時、後述のとおり検卵をしておくと、不良卵を外すことができます。

孵化器は鶏卵用なので、ウズラの卵を設置するときは脱脂綿やアルミホイルなどですきまを埋めて、転卵で卵がすべったり、転がったりしないように固定しておきます。卵の向きは気室のある丸いほうを上向きにするのが理想的です。



一度卵をセットしたらそのまま放置で、あとは2日おき(湿度の低い場合は毎日)ぐらいのペースで加湿用の水を補充します。水切れになると湿度が低下して警告ブザーが鳴ります。給水は横の給水口(穴)からもできます。フタを開ける必要がないので、庫内の温湿度が安定した状態で孵化させることができます。フタを開けると庫内の温度が急激に下がるので、孵化中はフタの開け閉めは控えましょう。

孵化器のリセットボタンを押すとインジケータには孵化開始から経過した日数が表示されます。通常は17日でヒナが生まれますが、温度設定が高いと16日で生まれたり、低いと18~19日で生まれたりと変化します。温度を低め(36.5度)に設定するとメスが多く生まれるという説もあるようです。

インジケーターに庫内の温度・湿度が表示される

検卵
検卵は、入卵前に目視では確認できない卵殻のヒビや不良の有無などを確認するために行います。孵化中の検卵は基本的には必要ありません。卵の中にいるヒナの生育状況を確認したい場合は安定期の7日目あたりで1回だけ検卵してください。孵化器に付属のLEDライトは鶏卵(ニワトリ)用でウズラでは確認が難しいので、LEDペンライトやエッグキャンドラーのような専用ライトの上に卵を載せて中を確認します。

自動孵化器付属のLEDライト

7日目の検卵では、有精卵で孵化を始めているか、空気の溜まりである気室のサイズが適切かどうかなどを確認します。検卵で光を通す卵は、孵化が始まっていない無精卵もしくは孵化開始直後に問題が生じた透明卵なので孵化器から外します。

孵化が進むと、卵の中の水分は徐々に卵の外に排出されていきます。合わせて卵重も徐々に減っていき、孵化中に12〜14%減少します。検卵時、気室のサイズや卵重を測定することで、順調に孵化が進んでいるかを確認できます。

気室サイズの変化(Urban Quail-Keepingより)

気室が十分に大きくなっていなかったり、卵重の減少ペースが悪い卵については、ヒナが卵の中から出るときに必要な酸素が確保できず、中止卵になる可能性があります。その場合は、湿度を下げるなどの調整が必要になります。逆の場合は水分が出すぎて脱水を引き起こす可能性があるので湿度を上げます。


なお、ウズラの卵は小さく冷えやすいので、検卵は必要最小限にしてください(基本的には検卵は必要ありません)。並ウズラの卵を孵化器の外に出したときに冷える速度を測定したところ、気温28度の環境では、孵化器内で37.5度あった卵が5分で34.5度まで低下、10分後32.5度に、そして25分後には30度を割り込みました。

卵殻の温度は10分で5℃低下

孵化中、特に卵の中でヒナの形ができてくる後期に卵を動かしたり、温度・湿度が変わることは死ごもりや、開脚障害(Spraddle legs)のような障害を引き起こす原因になります。ヒナの形ができてクチバシや脚が形成されるとちょっとしたショックで卵黄嚢(らんおうのう、ヨークサック)と呼ばれる袋が傷つきます。検卵は入卵前を除いて基本的には行わないほうがよいでしょう。

孵化14日目からの作業
ウズラは通常、孵化開始から17日程度で殻を割って出てきます。クチバシで卵の殻を破る嘴打ち(はしうち)が始まる頃には、卵の中のヒナは肺呼吸に切り替わっています。この時期に転卵をして卵の位置が動くと中のヒナの体勢が変わって窒息する可能性があるので、14日目に入ると転卵は中止します。作業は温度の変化に注意し、暖かい日中もしくは暖房の効いた部屋でおこないます。

転卵ケージを外し、孵化器底面に卵の尖った側を下にして卵を置きます。ヒナは鈍端側に頭を向けて嘴打ちをするので、卵の尖った側を上に向けると卵の中でヒナが逆立ちした状態になるので注意してください。

ニワトリの孵化アニメCG

この時点でタンクに水を十分満たしておくのが重要です。湿度が低いと殻や殻膜が固くなってヒナが出てこれなくなるので、14日目からはサイドのタンクにも水を補給して湿度を65%以上に上げます。

孵化直前は湿度を70%に上げる

合わせて、孵化直前になるとヒナ自身が発熱をはじめることで卵内の温度が若干上昇するので、孵化器の温度を初期設定値(37.8度)から0.5〜1度程度下げます。

生まれたヒナは孵化器内を歩き回りますから、隙間からヒナが下に落ちないように孵化器内のあらゆる隙間をキッチンペーパー等で塞いでおきます。下に落ちると最悪、水路にはまって溺死する可能性があるのでこの作業は忘れないようにしてください。

ヒナが落ちないよう隙間をティッシュで埋めておく

ここから孵化までの3日間が中止卵が発生しやすく、ヒナにとって一番大事な時期です。ここで温度が上昇、下降したり、動かしてショックを与えるとかなりの確率で中止卵になるので、3日間は孵化器のフタの開け閉めを極力控えましょう。

特に孵化直前に卵の位置を動かすと、ヒナの体勢が変わり呼吸ができなくなるなどで死ごもりになる可能性が高いです。孵化の様子を見ようと頻繁にフタの開け閉めを繰り返したり、触ったりは絶対しないように気をつけてください。

ヒナ誕生
ヒナは温めはじめてからほぼ17日で卵から出てきます。頭を鋭端側に向けた姿勢で卵の中にいるヒナは、まず頭の向きを鈍端側に変え、クチバシの先にある卵歯で内殻膜を破ることで気室の中の空気に接し、肺呼吸ができるようになります。その後、外殻膜と殻を破って卵の外に出てきます。

孵化直前、卵にヒビが

通常は気室のある鈍端部(丸いほう)から中央あたりにヒビが入り、穴が一周回るとフタを外すようにしてヒナが中から出てきます。ヒナが出てくるのは、個体差もあるので早ければ14日、遅いと20日を超えることもあります。今回は一番早い子で15日目には卵の中からピヨピヨと鳴き声が聞こえ、16日目にクチバシで卵の殻を破って誕生しました。

17日目になると9割のヒナがクチバシで卵の殻を破って次々と誕生します。18日目までには中止卵を除くほとんどのヒナが卵から出てきました。孵卵開始から20日経過したのでもう生まれないかなと思っていたところ、先に生まれたヒナたちの鳴き声に応えるかのように卵の中からピヨピヨと力強い鳴き声が聞こえ、1匹だけ20日目に遅れて出て生まれました。


育雛箱へ移す
生まれたばかりのヒナは体が濡れています。この状態でヒナを触ると臍帯部(お尻の穴)から大腸菌等が入る危険性があります。卵から出てもすぐに孵化器から取り出さず、羽根が乾くまでは孵化器の中に放置しておきます。この時、出てきたヒナが他の卵を動かさないようヒナ専用のスペースを仕切って作っておくとよいです。

ヒナは1〜2日程度エサ・水を与えなくても大丈夫なので、羽が乾いてヒナの状態が落ち着くのを待って、育雛箱(いくすうばこ、ヒナから成長になるまでを温度管理して育てる箱)に移してやります。1匹ずつ取り出すとそのたびに孵化器内の温度、湿度が低下して他の卵に悪影響を与えるので、1日数回に分けてまとめて取り出すようにしてください。

生まれてすぐは体が濡れている状態

育雛箱については、個体数が少ない場合はそのまま孵化器で代用しても大丈夫です。場所を移す場合は孵化の2、3日前までに育雛環境やエサの準備をしておきましょう。生まれたヒナが育雛箱から出られるようになるには、ここからさらに3〜4週間程度かかります。孵化開始から約1ヶ月程度で羽が生えそろいウズラっぽくなるので、夏休みの自由研究にもオススメですね。

孵化時のトラブル
中には卵にヒビが入ったのに出てこれない個体も発生します。原因は、卵の中のヒナの体勢が悪いことで起こる胎児姿勢異常や発育不良、卵殻への癒着などが考えられます。入卵から17日経過し、嘴打ち(はしうち)がはじまって殻が割れてきたのに途中で止まるなど、様子を見ていて出てこれないと判断したら早めに介助したほうがいいです。

通常、嘴打ちは初めに1箇所にヒビが入った後、しばらく止まり、その後数時間経過したら再開し、一気に殻を破ってヒナが外に出てきます。介助の目安としては、外卵殻膜(殻の内側の薄い膜)が乾燥してきた段階、もしくは卵の殻の大半が割れたのに中からヒナが出てこないとき、嘴打ちがはじまって12時間経過しても変化が起きないときが目安になります。

介助は、カッターナイフもしくは医療用のハサミの先端で気質側(殻の丸い側)から少しずつ割っていきます。まず、卵の上部4〜5分の1程度を割って様子を見ます。しばらく様子を見ても出てこないようであれば、残りの殻を上から少しずつ割っていきます。嘴打ちが始まっていてもあまり早い段階で介助すると、卵黄(ヨークサック)の体内への吸収が不十分なケースがあるので注意してください。

介助して出てきたヒナは体力が落ちて弱った個体が多いです。他のヒナとは別の場所もしくは仕切ったスペースで管理したほうがよいです。

孵化器を止める
孵化器に入れたすべての卵が孵ることはまずありませんから、どこかの時点で孵化器の運転を中止します。私の場合は、20日が経過した時点で卵に動きがなければ孵化器の電源を落とします。これは、黄身に含まれている栄養は17日+3日分あると考えて、20日を過ぎても出てこれない子は栄養不足で生きていないという判断です。ネットを調べたところでは22日目で生まれてきた事例もあるようです。

なお、孵化中止を決めた時点で卵の中からヒナの鳴き声が聞こえるなどの生体反応があれば、殻を割って中から出してやります。ヒナの体に卵の殻が癒着している場合は、ピンセットを使って丁寧に殻を剥がします。ヒナの体温が下がらないよう作業は温かい場所でおこないます。

孵化率はどのくらいか
今回、生まれてこなかった卵(中止卵)を確認したところ、ウズラ大学で購入したヒメウズラの卵30個のうち、9個は無精卵だったのか黄身のままの卵でした。これはちょっと残念な結果です。20個購入で10個オマケということだったので、だいたい3分の1ぐらい無精卵が混じっているようです。

そして、残り21個の卵については、18匹のヒナが生まれ、3個が中止卵でした。自動孵化器としては8割以上の孵化率(無精卵を除く)だったので、中止卵の多かった手動孵化よりは随分と孵化率は上がりました。孵化したヒナのうちペローシスは1体だけでした。3日遅れで生まれてきた子で、胃腸にも障害があったようで自力排便できず、看病の甲斐なく3日で亡くなりました。

余談ですが、今回、殻に穴が開いたものの穴が小さく中から出てこれない個体が一体だけいました。その子は、気室側(丸いほう)からカッターナイフで殻を割って中から出してやりました。現在も元気に育っています。

孵化中止卵の確認
孵化しなかった卵は、殻を割って中身を確認することでどのような理由で孵化しなかったかをある程度推測することができます。

また、ヒナが生まれた卵の殻のフタの大きさを見れば、孵化中の湿度が適正だったか否かの判定が可能です。フタ(キャップ)のサイズが小さいと気室のスペースが小さく湿度が高すぎたことを示し、半分あたりで卵が割れているときは水分が蒸発しすぎているので、湿度が不足していたと考えられます。

湿度が適正だった卵殻

湿度が低いと中央が割れる

孵化失敗の原因
孵化が上手くいかないときの原因について考えられるものを挙げておきます。

無精卵 有精卵として販売されているものでも、交配がうまくいかなかったなどの理由で2〜3割は無精卵が混入します。

初期死亡 採卵、輸送、貯卵時の管理不足や、長期貯卵、不適切な貯卵コンディション、栄養素の欠乏、細菌汚染などが原因として考えられます。

中期死亡 この時期の死亡はほとんど起こりません。急激な温度・湿度の変化、結露による酸欠などで中止卵になることがあります。

後期死亡 不適切な温度・湿度、ヒートショック、転卵回数・角度の不備、移卵時のダメージ、卵内の水分不足・過剰などです。後期は、初期の次に死亡率が高いです。

孵化時死亡 低湿度、高温、換気不足、不適切な転卵・種卵セット、移卵時のダメージなどが原因です。

奇形 ヒートショック、温度・湿度管理の不備、親鳥の栄養不足などで発生します。ヒナ飼育編に続く。

総合評価☆☆☆☆☆
長くなりましたが、自動孵化器を使ったウズラの孵化はこんな流れです。使い方が簡単で値段も手頃なので、初心者でも簡単にうずらの卵を孵化できます。今回、30個の卵を孵化させてみましたが孵化率は80%オーバー(無精卵を除く)で、以前に日本ウズラを手作業で転卵、孵化させたときよりかなりよくなりました。何より面倒な転卵作業を2時間おきに自動でやってくれるのがいいですね。

生まれてきたヒナも順調に育っており、2匹が星になりましたが、それ以外は1ヶ月経過した現在も元気です。生後生存率も手動孵化に比べると高い成績を残しています。総合評価は文句なしの星5つ。

動作音については、昔使ったことがあるフタの裏にヒーターとファンがついているタイプのインキュベーター(Wei Qian社製)はけっこうファン回転音が大きくうるさかったですが、今回購入した底面タイプは静かで、動作音はほとんど気になりません。寝室に置いても大丈夫なレベル。

難点を挙げるとすれば、本文中でも触れましたが、底面にファンやヒーター、湿度計、加湿用タンクが設置してあり、そこに卵の殻やヒナの糞が落ちるのが気になりますね。キッチンペーパー敷いておけば特に問題ないですが、落ちた殻を掃除するときはプラスドライバーでネットを外してという感じでけっこう大変です。ファンなどがフタ裏に設置してあるタイプのほうがメンテナンスはラクだと思います。

底にはけっこうな汚れが

なお、Amazonで温度が正しく測れていないといったレビューがありましたが、運転開始時は庫内の温度が均一になっていないため温度ムラが出て、正確に温度が出ていないような感じがしますが、1時間ほど運転続けると庫内の温度が安定します。庫内に温度計を設置して温度差を測定してみましたが、インジケーターに表示されている値と温度計の値は同じ値を示していたので、特に問題はないように思います。また、実際の値と誤差があるようなら、設定→CA→キャリブレーション調整で、表示温度と実際の温度と差を調整できます。


◯心構え編
◯孵化編
◯ヒナ飼育編
◯エサ編
◯エサ編(ウソホント)
〇グッズ編
◯いろいろ編
◯1ヶ月経過編
◯2ヶ月経過編

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